阪大文学部国語(現代文)の対策について 【前編】

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 ご存じの方も多いかと思いますが、阪大の国語の問題は文学部のみ専用問題が課されており、それ以外の文系学部(法学部、経済学部等)とは構成がかなり異なります。具体的に言うと、文学部専用問題においては独特な小説問題や漢文の問題が評論や古文に加えて出題されることで、全体としてウェイトが重くなっています。それにより、時間もかなりシビアな試験になっているのが特徴です。

(具体的な形式については過去問か、他サイトでいろいろ紹介されているのを見ていただくのが良いと思います。)

 この文学部専用問題、特に小説問題は難しいのに加え、何と言っても対策が非常にしづらいという面があります。というのも、京都大学や早稲田大学など難度の非常に高い国語の問題を出題する大学が存在しますが、阪大文学部の場合はこれらの有名大学と比べると問題があまり研究されていないからです。東大京大などは駿台文庫から出ている20カ年の過去問集のように解答の制作過程を詳細に記述した資料があるのですが、阪大は今のところは存在しません。たしかに、文学部国語の対策について紹介しているウェブサイトも多少あるのですが、それらの多くは問題形式の概要や出題傾向について述べるにとどまっており、具体的にどういった勉強をすればよいのかよくわからないという状況です。(毎年300人くらいしか受験生がいない試験なのですから、仕方がないと言えばそうなのですが。)

 試験問題が特殊な分その対策は一部例外的なものにならざるをえず、受験生の不安を解消するためには具体的な対策方法が提示される必要があると思います。一番良いのは学校の国語の教員や予備校講師とコミュニケーションをとりながら対策していくことなのでしょうが、受験生全員がそのような環境の下で勉強できるわけではありません。(かくいう私もそうでした)ですから今回は少しでも攻略の道筋が明確になるように、対策の方法についてできるだけ具体的に述べてみようと思います。

時間配分について

 勉強しているときはあまり意識しないかもしれませんが、時間は非常にネックです。共通テストでも言えることですが、同じ実力でも時間の管理を上手くやるのかそうでないかで数十点の差が生まれるかもしれません。後でも同じことを書きますが、とにかく過去問で練習して「妥協すること」に慣れるべきです。出版された模範解答は長い時間をかけて推敲されたものですから、2時間の試験時間の中で模範解答を真似て細部にこだわることはほぼ不可能だといえます。時間の戦略は対策の4~5割を占めるくらい重要なものだと思います。

 実際、古文と漢文を含めて大問が4つあるので単純に1問にかけることのできる時間は30分、現代文は文章を読むのに10分程度かかりますから小問4問構成だとして1問5分で書き上げないといけません。正直かなり厳しいです。過去問を強調するのは、国語力の養成というよりかは時間のマネジメントという視点で練習する必要があるからです。

 このように厳しいのは重々承知ですが、絶対にしてはいけないことがあります。それは空欄をつくってしまうということです。本番何があるか分かりませんし、焦ったあまり時間が大幅に押してしまうかもしれません。しかしながら、(至極当たり前のことですが)何も書いていない答案が評価される可能性はゼロです。何か書けば基本的に何らかの評価はあるはずです。最悪、一か八か本文表現そのままのつなぎ合わせでも良いですから何かは書きましょう。最低限空欄を作らないことを念頭に置いて練習していくのが良いと思います。

(実際のところ、現代文の採点にかんしては思ったよりも高い評価が来ます)

評論の対策について

 上記の通り厳しい時間制限に対応するためには問題文を読んで設問に答えるプロセスにおいて、一定の方法論を定着させることが重要でしょう。もちろん、文学部を目指される方となれば国語的なセンスにも自信がある方が多いかと思いますが、出題される文章は年度によって内容が異なり難易度にも差があるため、ある程度まで安定して得点できるようなルーティンを確立することをお勧めします。具体的には、文章の形式的な面に依拠しつつ要点を抽出し、答案を組み立てていくことです。読解作業の一部の自動化と議論のまとまりを把握するのに役立つ受験参考書を挙げておきます。

『新版 現代文 読解の基礎講義 (シグマベスト)』中野芳樹著

 関西駿台現代文科の中野先生が執筆された受験参考書です。もともと駿台文庫から出ていた『現代文読解の基礎講義』が絶版になりフリマアプリで高額で取引されていたようですが、その状況に著者が心を痛め、リニューアルして文英堂から出版されました。

 関西の駿台では多くの講師がこの本で提示されるような方法論を踏襲して授業を展開しています。最大の特徴は本文へのマーキング(「客観的速読法」と呼ばれる)です。表現形式(レトリック)を根拠に、要点となる箇所に線を引きながら読んでいきます。この方法はあらゆる現代文の試験に応用可能ですが、特に阪大の国語入試や共通テストなど、時間制限が厳しい試験に対し効力を発揮するのではないでしょうか。

…この方法は、文章難度や読者の読書経験・知識量などにはほとんど左右されず、一回の通読で正しさと速さとが両立できる。すなわち、「読解速度と内容理解のジレンマ」を合理的に解消できる方法なのである。

『新版 現代文 読解の基礎講義』p.21

 この本を使うことの利点として、読解を作業としてルーティン化することで文章難度に左右されずにある一定水準の答案を安定して作ることができるようになるということが挙げられます。普段の練習と同じ作業をすれば解答欄を埋めることができるという確信によって試験場での精神的不安を緩和させることができるでしょう。

しかしながら、文章の内容を把握することとルールに従ったマーキングを同時に行えるようになるには練習が必要ですので、何度もこの作業を施して、最終的にほとんど意識せずに線を引けるようになりましょう。

『現代文読解力の開発講座 〈新装版〉』霜栄著

 文章の中の形式的な面に注目して考えていくことが速読・客観的な読解に有効であるということは先ほどもお伝えした通りです。この本では特に文中の表現の形式を頼りにしてよりマクロな視点から段落の関係性を捉えたり、概念の対立をおさえたりするといった論理的な思考力を養うことに重点が置かれています。

 現代文では難解な用語が散らばめられた学術的な文章を読ませられがちです。また設問においては論証の骨格を正確に把握して要旨をまとめたり、文中の同意表現から傍線部を言い換えることが要求されます。そのためには頭の中で情報が錯綜して混乱することがないよう、登場する概念の関係をマッピングしたり、文中の表現を「同じ」か「対立」なのかという視点で眺めることが有効です。つまり、骨組みを見透かして論理によって単純化することが重要なのです。(とはいえ、かなり難しい作業ですが…)この参考書では、接続詞の性質などに着目しながらそのような作業への取り組み方が実況中継的に提示されています。

 哲学者である野矢茂樹先生は著書『論理トレーニング』の中で『現代文読解の開発講座』を高く評価しています。

一般に、論理トレーニング第Ⅰ部と共通する話題を扱っている邦文文献は受験参考書である。そしてそれらの中には、たんなる入試テクニックにとどまらないものもある。たまたま私の目にとまったものをもう1冊挙げておくならば、霜栄『現代文読解の開発講座』(駿台文庫)も、気合の入った本である。

『論理トレーニング』p.160

 全体としてウェイト軽めの参考書ですので、何回か解きなおして技術を定着させていきましょう。

 上の2冊をとりあえずおすすめの参考書として挙げておきますが、上記の参考書を新たに取り組むのは時間がかかると思われるので既に使い慣れたものがあるという受験生は無理して取り組む必要はないと思います。ただ後編の記事でも紹介するのですが、1冊目の参考書には文学部の小説問題が取り扱われていますのでその部分はぜひ参照するのがよいでしょう。2冊目の参考書と同じような内容は基本的に他の受験参考書でも展開されていますので互換性は十分にあるかと思われます。しかし忘れてはいけないのは過去問に取り組む時間を十分に捻出するということです。参考書ばかりに集中してしまい、阪大の試験形式に慣れておらず点数がとれなかったというのは本末転倒ですので早くから実践的な演習を積むようにしてください。

 文学部の評論はその他の文系学部とそれほど違いはありませんが、字数制限がない解答枠が与えられるということと漢字の出題が(おそらく)無いという点、そして一部解答の根拠が明示されておらず、自分で推測しなければならない問題が出題されるという点が微妙な違いとして挙げられます。解答の字数については公式発表の解答や予備校各社の問題を実際に解答欄に書き写してみて字数の感覚を掴んでおいてください。また過去問をやっていると偶に見かける根拠が明示されていない問題ですが、正直これは厳しいのではないでしょうか。一問5分以内という限られた時間で本文に無いという確信を持ったうえで推測できればよいのでしょうが、実際はそれっぽい部分を抜き書きして答案を埋めるのが限界なのかなと思います。難問に時間をとられて他の問題を圧迫するのが一番良くないでしょうから妥協するというのも大事な態度でしょう。

 時間配分について、そして評論の対策について述べました。長くなりすぎますので一旦ここまでを前編とし、小説の対策と過去問についてを後編の記事にまわしたいと思います。評論対策については文学部以外の諸文系学部とほぼ同じになるかと思われますので、文学部を志望されている方は後編をぜひご覧ください。

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