完全な国家がなぜ没落するのか

カール・ポパー『開かれた社会とその敵』第1巻 上 岩波文庫版の画像 哲学

カール・ポパー『開かれた社会とその敵』第1巻 上

 最初の、「十分な完全国家」が「なぜ腐敗の法則を免れることができないのか」というのは最大の難問の一つである。これに対しプラトンは、感覚的で経験的な知識と純粋で合理的な知識を峻別し、この区別を優生学の領域に適用することで説明する。すなわち、最善国家の支配者は支配種族の血統保存にかんして何らかの知識をもっているが、それは「合理的ではなくたんに経験的なもの」であるため「正確ではないし、信頼できるものでも」ない。よって「血統保存が純粋になされ」ずに退化が始まるというものである。

こうした神話はプラトンのヒストリシズム的社会学における「社会革命の根本法則の基礎」となる。つまり、種族の退化をきっかけに「支配階級内部における分裂」が起こり、「あらゆる歴史発展の起源」が説明されるのである。この種族の血統保存の理論は一種のメタ生物学に基礎が置かれており、ポパーはプラトンが「生物学的人種理論の最初の提唱者」であったと述べている。

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